母から「あなたはお父さんとお母さんが愛し合って生まれた子」と言われながら育った雨音。しかし人工授精の技術が発達し、夫婦が性行為をすることはタブーとされている今、雨音は交尾をして自分を産んだ母に嫌悪感を抱いている。人が恋や性の対象として見るべきなのは、家の外の恋人や二次元キャラクターだと言われているし、雨音の初恋もテレビアニメの主人公の少年・ラピスだ。雨音がラピスに恋をしていると実感するとき、自分は母とは違うのだ、周囲と同じく正常だとわかって喜びを感じた。雨音は、同じようにラピスに恋をしている同級生の水内といろいろな話をした。ラピスを思いながら、雨音と水内は初めてお互いの身体をつなげた。
大人になり結婚をした雨音だったが、夫に襲われそうになり離婚をする。夫から性欲を向けられショックを受ける雨音だったが、病院で医師になった水内と再会。男性の妊娠を研究している水内の話を聞くうちに落ち着きを取り戻していった雨音は、高校からの親友である樹里の勧めで、出会い系アプリに登録をする。そこで出会った朔は、雨音の元夫の行為に吐き気を催し、雨音に心からの同情を寄せた。
かつて雨音や樹里たちが暮らしていた千葉は今、実験都市となっている。選ばれた住民たちが一斉に人工授精を行い、生まれた子どもは住民全員の子として愛されながら育つその都市は、"エデン"と呼ばれている。家の外に恋人を作ったもののうまく恋愛ができなかった雨音と朔の夫妻は、エデンへの移住を決める。水内の協力を得て、エデンには明かさないままふたりの子どもを授かろうとする雨音と朔。二人にとっての楽園(エデン)はユートピアか、それともディストピアか・・・・