雄大な自然が広がるカナダ・マニトバ州。90歳のアガサ・ボックは、この地でひとり暮らす。熟れたスイカを見分ける彼女なりの方法、粘着テープで家を補修するコツ......。移りゆく季節と歩調を合わせながら、自然と共存するなかで身につけた知恵とともに生きるその姿は、清々しいほどにたくましい。
「偽りの愛より独身がいい」。生涯独身を貫きながらも、少しずつ語られる若き日の恋や家族の記憶――。長い歴史とともに人生を力強く歩んできたアガサの姿は、観る者それぞれに"祖母との記憶"を呼び起こすはず。
監督を務めたのは、アガサの姪にあたるアマリー・アトキンス。2019年に撮影をスタートさせ、年に1、2度ほどアガサの自宅を訪れ、コロナ禍では電話を通しての録音も取り入れながら、6年以上に渡り彼女の姿を追い続けた。
一人の女性の人生を映画の中心に据えるため、アトキンスは女性だけのクルーで撮影を決行。「どんな時も自分のスタイルを崩さず、信念を曲げずに生きる伯母の生き方そのものが映画的だと感じていた」とアトキンスは振り返る。そのフィルムの至るところに、伯母アガサに対する尊敬の念が滲んでいる。